こんにちは。今日は私の人生におけるイベントの備忘録です。
幼少期からずっと憧れていたオニオングラタンスープを作りました。
発端
中学校の国語の教科書に載っていた『温かいスープ』という話をご存知でしょうか?
非公式っぽかったのでリンクは貼りませんが、検索すれば全文読むことも出来るみたいです。
今道友信氏が書いた、国際性とは人類愛であることを説く、非常に素敵なエッセイです。
さて、その中で非常に印象的だったのが、フランス人の母娘が差し出してくれたオニオングラタンスープでした。ひもじい中、極寒のパリで食べるどっしりとしたオニオングラタンスープ。
調べたら中にパンが入っていて、チーズがたっぷりと乗り、オーブンでこんがり焼かれたスープ。
それはどれだけ美味しいのだろうかと想像するだけでうっとりとした気持ちになりました。
授業を聞きながら私は何度もその話を読み返し、大人になってから忘れられずにいました。
上京した私はサイゼリヤで玉ねぎのズッパを食べる度に、今道氏はこんな感じのものを食べていたんだなぁと思いを馳せていました。というか、オニオングラタンスープの概念目当てでズッパを頼んでいたと言っても過言ではありませんでした。
玉ねぎのズッパは確かに非常に美味しいです。値段や手間から考えても最適解と言えるのではないでしょうか。
ですが、私は“どっしりとした”オニオングラタンスープがどうしても食べてみたかったのです。普段は買ってきた味付き肉を焼く程度しか自炊しない私の挑戦が始まりました。
レシピの選定と準備
さて、有名な料理だけあって、検索したらたくさんのレシピが出てきて大混乱しました。
非常に悩みましたが、私が選んだのは土井善晴先生のレシピでした。

どっしりという観点から一人前の分量の多さが高ポイントでしたし、長い時間玉ねぎを炒めなくてはならないと聞いていたけど、このレシピではかなり時間が短いというのが決め手でした。
チキンスープを作る
初めての料理を作る上で大切なのは、レシピを熟読し、忠実に進めることです。
ということでレシピを熟読していたところ、前提となるチキンスープがいるらしいと気付きました。

骨付き肉と煮干しを50分煮込むと書かれており、若干の眩暈を感じましたが、レシピには忠実に従いました。
オニオングラタンスープを作る前の日に大きめのスーパーに行き、骨付き肉と煮干しを買いました。
出汁を取る必要があっても全て顆粒出汁で済ませてきた人生でしたので、初めて自主的に煮干しを買いました。作り終わった今も半分以上余っています。どうしよう。
帰宅してから、水を計量カップ10杯分と骨付き肉、煮干しを鍋に入れて煮込みました。
ここで私は大きなやらかしをしています。家にある計量カップは普通の物より大きく、10杯と思って入れていた水は、恐らく15杯分くらいでした。なのでレシピ通り50分煮込んでも一向に濃度が濃くならず、最終的に二時間くらい煮込むことになりました。家の計量器具の大きさはしっかり把握しましょう。
また、煮干しで出汁を取ったのが初めてだったので、スープだけだと妙に魚臭いな……と思いました。でも、次の日に具材を入れたら全然気にならなくなったので料理って不思議です。
次の日、冷ましたスープを冷蔵庫に入れた後で出汁を取る為にゆでていた骨付き肉を朝ごはんとして食べました。親鳥の骨付き肉が安かったので買ったのですが、非常に硬いことが特徴の肉で、頑張って噛んでいるだけでかなりお腹いっぱいになりました。
買い出し
我が家にはオーブンと玉ねぎこそあったものの、耐熱容器もなければバケットもありませんでした。
近所の百均で耐熱容器を買い、サービスの新聞紙に丁寧に包みました。後でこの新聞紙に救われることをこの時の私は知りませんでした。その後、近所のスーパーでバター、パン屋さんでバケットを買いました。
パン屋さんでバケットを買うことなどほぼない人生だったので、長いバケットを抱えて移動しているだけで、自分が丁寧な暮らしをしている人間のように思えてだいぶ浮かれて歩きました。
ここでの私のミスですが、鍋掴みと鍋敷きを買っていません。家にもありません。
出来上がったスープの前で本気で頭を抱えました。皆さんは買いましょう、鍋敷きと鍋掴み。……多分普通の家にはきっとあるものなんですけども。
オニオングラタンスープを作る
まず謝っておきたいのですが、作るのに必死で写真はほぼないです。すみません。
さて、準備は出来たので、私は土井先生のレシピに忠実にオニオングラタンスープを作りました。
ほぼ使われていなかったオーブンも順調に動いて、切ったバケットが自動で焼けたという事実だけで私は相当感動しました。さて、ここで私は家に鍋掴みがないことに気づいて絶望したのですが、耐熱容器を包んだ新聞紙がその代わりになってくれたので本当に本当に助かりました。でも普通に危ないので皆さんは絶対に鍋掴み買ってください。私も近々買います。
玉ねぎのみじん切りはフードプロセッサーで行いましたが、手先が不器用なので非常に助かりました。
出来上がった玉ねぎを鍋でじっくり炒めて、バターと水を乳化させる工程も時計とにらめっこして終わらせることが出来ました。ここで焦がしたら全部台無しだとかなり怖かったです。
昨日作ったチキンスープも加えて、塩と胡椒で味を整えました。味の整え方が良く分からなかったので、ちょっと味見をしたのですが、チキンスープ単品で飲んだ時と玉ねぎ等を加えた後では美味しさが全然違っていてかなり驚きました。
チキンスープはあくまで出汁としての側面が強く、玉ねぎや味付けが加わって完成するんだと実感しました。味付けって大事です。
そして、同時期にオーブンの予熱にも取り掛かっていました。説明書を熟読し、ボタンをポチポチ押すだけだったので全然簡単でした。もっと難しいイメージがあったのでびっくりしました。
出来上がったオニオンスープを耐熱容器に流し込み、トーストしておいたバケットと乗せて、親の仇のばかりにチーズを振りかけました。土井先生はグリュイエールチーズというものをお勧めされていましたが見つけられなかったので、せめてシュレッドチーズをたくさん使いました。

案外良いのでは……? そんなことを考えながら、この写真を撮ったところで、ちょうどオーブンの予熱が完了しました。
レシピ通りに時間を設定し、洗い物をしながら待つこと十数分。ぐつぐつと煮えるオニオングラタンスープが完成しました。

チーズの種類の関係か焦げ目こそないものの、パンはサクサクでぐつぐつと煮えているオニオングラタンスープが姿を現しました。大感動です。
鍋敷きはないので、家にあるチラシをかき集めて簡易鍋敷きを作ってスープをテーブルに乗せました。普通に危ないので皆さんは鍋敷きを買って下さい。私も買います。
緊張しながら一口食べて、普通に感動しました。心配していた煮干しの生臭さは綺麗に消えて旨味があり、バターと玉ねぎのコクは深く、パンは分厚くもサクサクでチーズは伸びる。まさに私が求めていたどっしりとしたオニオングラタンスープでした。
器を二つで作っているので、ちゃんと冷ました方はテーブルに乗せて写真に収めました。

食べ進めながら考えるのは、やはり「温かいスープ」のことでした。
これだけの手間暇をかけて作ったオニオングラタンスープを提供されて、こんなに温かいなら、今道氏はどれだけ嬉しかっただろう……。人類に絶望することはないとまで断言されていましたが、確かにあの状況下でこんなオニオングラタンスープを貰えたら、生涯希望が持てるだろうなと実感が湧きました。これが分かっただけでも作って良かったです。
以上です。食材と耐熱容器のお金だけでも結構かかり、時間もたくさんかけて、予想していたより大掛かりな挑戦となりました。正直、味だけ確かめたいなら、サイゼリヤの玉ねぎのズッパでも問題はないと思います。やっぱりあれは美味しい。
でも、その分いろんな発見も多く、とても楽しかったです。普通に美味しかったですし、手間暇かけて料理することの良さもなんとなく感じ取ることが出来ました。
何より、大好きな作品のあれこれを実感と共に感じ取れるようになったのは良かったな~と思いました。満足です。ではまた。