在りし日の私達へ

「ただいま帰りました」  春歌が玄関の戸を開けても返事はない。そのことに対して春歌も何か思うことはなくなっていた。一緒に暮らしているセシルはまだ家に戻っていないか、辛うじて着替えた状態でベッドに倒れ込んでいるのが常だった。  キッチンを覗くと洗われた皿が食器棚にしまわれているのが見える。どうやらセシルは家に戻っているらしかった。 「後片付けはわたしがするって書いておいたのに……。無理させちゃったな……」  次に作り置きの夕食を置いておくなら、捨てるだけで済む紙皿でいいのかもしれないと春歌は若干の罪悪感と共に考えた。仕事で疲れ切っているだろうに、セシルは出来る範囲で春歌を気遣っている。お礼の文面が添えられた書き置きを春歌は丁寧に引き出しへとしまった。  時計を見ればもう日付が変わろうとしている時間だった。自分の夕食を取る気にもなれなくて、春歌はシャワーだけ浴びると寝室へ向かう。ベッドに春歌のスペースを空けて、セシルが眠ってる姿が見えた。最近は起きている姿よりも眠っている姿を見る方が増えている。  春歌はセシルの寝顔を覗き込んだ後、その背中に頬を寄せてすぐに眠りへと落ちた。  無事にデビューして、軌道に乗って寮を出て、一緒に暮らすようになって、毎日はとても充実していた。特にこの二ヶ月は仕事が更に増えて、セシルも春歌もまともに休める時間は殆ど無かった。それは互いに覚悟の上であり、ただただ有り難いと思い続けてきた。寧ろもっと頑張らなければと携帯での連絡を通じて互いを鼓舞した。互いの声も聞けない中で、一日にたった数往復のやりとりが彼等の心の支えだった。  二人が社長に揃って呼び出されたのはそんな日々の最中だった。 「新しいお仕事でしょうか?」 「サオトメに呼び出されるのも久しぶりですね。ワクワクします」  大規模なライブか、映画の主題歌等のタイアップ企画か、社長から呼び出されるほどの仕事であれば、それに向けての準備やスケジュールの調整なども考えなくてはならない。今後の予定が書かれた手帳は既にパンク気味だ。それにどうやって大仕事を当てはめるか考え込みつつ、二人は社長室の重い扉を開いた。 「いらっしゃ~い」  早乙女は普段通りの陽気さを浮かべて椅子から立ち上がった。春歌は深く頭を下げ、セシルもすぐそれに続いた。 「おはようございます。それで、ワタシとハルカの新しい仕事はなんですか?」 「オ~! やる気に満ちあふれてますね。Mr.アイジマ」 「ハイ! とてもワクワクしています!」 「では早速お知らせの発表をしましょ。今日呼び出したのは他でもない。それは……」 「それは……?」 「今から二人には臨時休暇を取ってもらいますゥッ!」  大音量で叫ばれた知らせは部屋一杯に反響した。その後には水を打ったような静寂が辺りを包む。 「は……?」  漸く声を絞り出したセシルは、早乙女を訝しげに睨んだ。当の早乙女はそんな対応も想定の内だったのか、普段の態度を崩すことはない。変わらないその笑顔を見て、セシルは自分が今聞いた内容が聞き間違いではないらしいと改めて実感した。 「え……休みですか!?」  二三度瞬きした後、春歌も漸く声をあげた。この2ヶ月の状況から考えて、急に休みが発生するということはありえない。もしかすると、これは言い方を変えた謹慎なのではないか、とまで彼女は推定した。セシルも春歌も何か罰せられるようなことをした覚えはない。強いて言うのなら二人の関係が世間にバレたのかもしれない。考えが深まるにつれて春歌は全身から血の気が引いていくのを感じた。 「ワタシもハルカもまだたくさん仕事があります! 休むことなんて出来ません」 「そうです。それに理由を教えてください」 「期間は今から明日いっぱい!」  早乙女は詰め寄る二人の主張を当然の如く無視し、〝たびのしおり〟と書かれた冊子を春歌へ押し付けた。 「旅? 謹慎中に旅行って行っても良いんでしょうか……」 「えっ? ワタシ達キンシンするのですか? いえ、それより今からは無理です。ワタシもハルカもこれから仕事が」 「その辺りはもう調整済みナノヨ。今すぐスケジュールをチェーック!」  促されて二人が手帳を開くと、二日間の予定は既に書き換えられていた。入っていた仕事の予定は全て別日にスライドされており、数ヶ月ぶりの休日がぽっかりと出来上がっている。 「い、いつの間に……」 「そういう訳で、いってら~っしゃいッ!」  早乙女に押し出されるようにして部屋を出た瞬間、扉が音を立てて閉まった。再び中に入ろうとしても、今度は鍵でも掛けられたかのように全く開かなかった。セシルと春歌は互いの呆然とした顔を見合わせた。 「本当にお休みなんですか?」 「そうみたいですね。……ハルカ、それはなんですか?」 「えっ、なんでしょう」  春歌の手にはしおりの他に、切符が二枚握られていた。どうやら部屋を出る瞬間に空いていた手に押し込まれたらしい。 「――線、十三時二十五分」 「出発駅はそう遠くないですね。今から準備をすれば間に合うと思います」 「そうですね。急がないと!」  慌ててマンションへと戻った時にはあと数時間で列車が出る時間だった。急なロケが入ってもすぐに行動出来るようにそれぞれ荷物は常にまとめてあるので、準備にはそう手間取らなかった。何枚か服を鞄から入れ替えながらセシルは呟く。 「……ですが、やはり不満です。こんなことをしている場合ではない。今が一番大切な時ではないのでしょうか」  セシルからは僅かな焦りが見て取れた。この数ヶ月間忙しかったのは彼等だけではない。同期の仲間達も次々に仕事が増え、気が抜けない状態が続いていた。ここで二日間立ち止まるのはハンデのように感じてしまうのも無理はない。春歌は手を止めて僅かに視線を逸らした。これは彼女が何か考え込む時の癖だった。 「わたしもそう思います。でも、社長は無意味なことを言う人ではないと思います。今回もきっと何かあるような気がするんです」  そう答えつつも春歌の表情はあまり明るいものではなかった。どちらかと言えば仕事に対して根を詰めているのは春歌なのだ。そんな彼女が急に仕事を止められて困惑しない訳がない。 「確かに、サオトメの言うことは正しいことが多い。今回もそうだといいのですが……」  説明が不足している点は頂けない、内心で呟きながらセシルはキャリーバッグの蓋を閉めた。  荷物を抱えてマンションを飛び出すと、既に迎えの車が止まっていた。やたらと長い高級車に送られて駅に着いた時には既にホームへと列車が滑り込んでいたので、セシルと春歌は慌てて改札を通った。  駅員は何か聞かされていたようで、切符を見せた途端、一番後ろの車両に二人を案内した。案内された車両は貸し切りのようで、二人が通された後は誰も入ってこなかった。ここに辿り着くまでの手配にセシルは内心舌を巻いた。ここまで誰にも見られることは無かった。あとは列車が動きさえすれば、変装を解いても誰にも気付かれない。本当に外部へ気を遣うことなく、セシルも春歌も旅に集中できるよう万事進められているのだった。  通された席は窓際のボックス席で、窓からは曇り空と薄暗い街並みが見える。荷物を運び込んで、二人は向かい合わせに腰掛けた。 「なんだか急に実感が湧いてきました。本当に旅行ですね」 「ええ……そうですね」  セシルが答えると同時に、発車ベルが鳴り響く。列車が動き出し、窓から見える街並みは瞬く間に見慣れたものではなくなっていった。 「あまり悩んでいても仕方ありません」  春歌は遠くを見つめたまま自分を励ますように呟く。彼女は鞄からしおりを取り出すとパラパラと捲り始めた。その時セシルは自分達が行き先すら確認していなかったことに気付いた。 「折角の機会ですから。わたし、楽しもうと思います」 「アナタがそう望むのなら」  春歌の少しぎこちない微笑みにつられて、セシルも漸く顔を綻ばせた。  列車が向かう先は天気が落ち着いているのか、数十分も走ると窓からは穏やかな日の光が差し込んでくる。春歌はそれを頼りにしおりを読み進めていた。明らかに早乙女の手書きで書かれている内容は案外まともで、SNSへの投稿禁止などの簡単な注意事項や用意された宿泊施設の紹介だった。 「ハルカ、行き先は書いてありますか?」 「ええと、この電車を終点まで走った先にある町らしいです。温泉が有名だそうですよ」 「温泉。…………それは楽しみですね」 「はい! それから旅の目的なんですが」 「あっ、ハイ」 「セシルさん?」 「いえ、続けてください。旅の目的まで書いてあるのですか?」 「そうです。〝二人の関係を見つめ直してチョーダイ〟と」 「二人の関係……」  セシルと春歌は目を合わせて黙り込んだ。早乙女の意図は概ね理解出来たが、それをわざわざ指示される理由が二人には分からなかった。 「わたし達、そんなに上手くいってないように見えたのかな」 「そんなことはないと思います。ワタシ達の想いは通じ合っている。そうでしょう?」  間髪入れずに答えたセシルに反応するように、視線を落としていた春歌は顔を上げた。 「わたしもそのつもりです」  春歌はセシルに見えないようにしおりを閉じた。ページの隅に書かれた〝こんな機会を与えるのは最後〟と書かれたメッセージをセシルに見せるのは気が進まなかった。    そのまま列車に揺られて、二人は同じ時間を過ごしていた。元々セシルも春歌もそう多くを語りたがる性質ではないこともあり、あれふれた空気が流れている。 「景色が随分変わりました」  セシルは車窓から見える古びた街並みを興味深く眺めた。都会でも田舎でもない街並みはまだまだ彼には見慣れないものだった。彼等を導く列車はますます山奥へと進んでいく。 「終点の町はもっと古い街並みが沢山残っているみたいです。少しだけでも見て回れれば良いんですけれど」 「着く頃には日が暮れているでしょうから、難しいかもしれませんね」  そう答えながらセシルは僅かに目を細めた。会話が終わりそうな気配を感じる。セシルが春歌の様子を伺うと、彼女は仕方ないですね、と相槌を打ちながら手帳を開いていた。  このような流れをセシルは数回に渡って繰り返していた。ただ一緒に過ごす喜びを味わえばいいのはセシル自身も分かっていた。だが、少しでも何か関わりを持ちたくて、つまらない話題を持ち出しては、すぐに会話を終わらせてしまう。普段であれば、セシルもそんなぎこちなさを全く気にすることはないが、今それが胸にしこりのように残ってしまう。久しぶりに共に過ごす時間に若干の戸惑いが残っているのかもしれなかった。 「セシルさん」  そんな考えを巡らせていた最中に聞こえた春歌の声で、セシルは僅かに伸び上がった。 「あ……ごめんなさい。びっくりさせちゃいました」 「大丈夫です。どうしたのですか?」 「あの、先月に出演されていたドラマをやっと見ることが出来たんですけど、面白くて本当に素敵でした。家でも練習されていたアクションシーンがとても格好よかったです」 「ありがとうございます。見てくれたのですね、嬉しいです」 「それからこの前見せて頂いた衣料品のCMも実際に流れている所が見れました。やっぱり大きい画面で見るとドキドキしてしまって、売上も少し伸びたんですよね。おめでとうございます」 「はい。ブランドの方々にも褒めてもらいました」 「そうです! CM関連でファッション誌にも出てましたよね。ヘアアレンジがすごく格好良くて……」  それから、と春歌は持っている手帳を次々に捲りながらセシルの仕事への感想を伝えていった。地方紙のコラム記事からバラエティやドラマの出演、CMまで公開済みの仕事は全て網羅していた。一つ話す度に夢見るような瞳で、本当に素敵だったと春歌は感嘆の溜め息を溢す。 「ハルカ、その手帳ですが……」 「これですか?」  春歌は手帳のページを捲る手を止める。それはセシルから微かに見える端まで書き込まれていた。彼女は視線を左右に揺らすと、我に返ったように頬を上気させた。 「すみません。どうしても忘れたくなくてメモしていました。本当はすぐにお伝え出来たら良かったんですけれど……」 「My Princess 顔を上げてください。恥ずかしがることはありません」  言われたとおりに春歌が顔を上げると、セシルは外の流れる景色を眺めていた。その瞳はいつにも増して光を抱いているように見えた。 「次からワタシもそうしたいです。アナタに伝えたいことがたくさんあるのだから」 「いいと思います! 後から見直して自分がこんなことを考えてたんだなって思うのもすごく楽しいですよ」  紐解かれる彼女の喜びの記録を聞きながら、セシルは心の片隅に小さな後悔を抱いていた。セシル自身も春歌の仕事に触れて、考えたことは沢山あった筈なのに、その感情の機微を全て彼女に伝えることはもう叶わない。その時セシルは初めて余裕のなさを顧みていた。大切な筈の記憶はせわしない毎日に押し流されて、ぼやけた輪郭しか残っていなかった。  他の車両の乗客は終点までで降りていたらしく、誰もいないホームに降り立ったのはセシルと春歌だけだった。西日の差す駅はまるで覆い隠されるようにして、鬱蒼とした竹林に囲まれている。遠くの景色はよく見えなかった。 「もうすぐ日が暮れてしまう。早く旅館に向かいましょう」 「そうですね。道に沿って歩けばすぐだそうです」  改札を通って駅を出ると、街灯代わりなのか提灯が竹林のあちこちへ吊されていた。既に藍色へ変わりつつある空に橙色の灯りが点り、道を示している。周囲に民家らしき建物はなく、少し先に旅館であろう建物の影が見えるばかりだった。 「綺麗ですけど、少しだけ怖いです。こんなに美しい光景なのに」 「美しいからこそでしょうね。……大丈夫、ワタシが側にいる」  セシルは春歌の手をそっと引いた。辺りに誰もいないからこそ、セシルが出来る励ましだった。春歌はそっと周りを見渡してから、その小さな手に力を込めた。旅館から零れる灯りがはっきりと見えるようになるまで、セシルはその手を離そうとはしなかった。  建物を囲む高い塀に沿って暫く進むと、篝火が焚かれた門があった。掛けられた古ぼけた看板には『追想庵』と書かれている。 「ここですね。こんなに大きいお屋敷なんて、わたし初めてです」 「ああ、とてもフゼイがありますね! 早く入りましょう!」  目を輝かせるセシルに続いて、春歌も門をくぐった。旅館は建物の大きさこそやや小さめだったが、壁に染み一つなく随所に彫り物などの細かな装飾がされている豪奢な造りだった。中に入ると広い玄関口に黒髪を纏めた中年の女将が待機していた。 「愛島様、七海様ようこそいらっしゃいました」 「ありがとうございます」 「あ、ありがとうございます」  女将が静かに頭を下げると、幾人かの仲居が荷物を持つ。もう話は全て通っているらしく、チェックインの手続きをして二人は最奥の部屋へと案内された。 「着きましたよ。本日は御二方貸切ですから、何かあればいつでもお声がけ下さい」  長い廊下を抜けた先にあるその部屋は落ち着いた和室だった。 「貸切ですか!?」 「ええ。だから遠慮などなさらないで下さい」  事も無げに女将は答えていたが、このクラスの旅館が貸し切られることなどそうある話ではない。春歌がこの旅行の準備期間や予算に思いを馳せている間に女将達は部屋の中央へ荷物を置くと、夕食の時間を伝えて去って行った。 「わぁ……! 良い部屋ですね。ワビサビが感じられます」  セシルは何も気にすることなく、目の前の異文化に惚れ惚れとしていた。彼にとっては貸切など当たり前の人生だったのだから、非日常空間を前にしてそんなことに気を留める必要性など微塵もないのだった。 「そうですね。お部屋も広いですし、夢みたいです……!」  そのことに即座に思い至った春歌はすぐさまセシルへ歩調を合わせた。彼女は早乙女がサプライズに掛けた労力は恐縮するよりも敬服するにとどめた方が良いと本能的に理解していた。 「見てください、セシルさん。外に温泉がありますよ! 備え付けなんて贅沢ですね」 「スゴイです!? ワタシ達専用の温泉なのですね」  二人は窓辺に駆け寄ると、湯気を立てている掛け流しの温泉を眺めた。小規模な露天風呂になっており、竹の囲いと外の竹林の見える景色からは開放感が感じられる。 「あとで入るのが楽しみですね」  そう無邪気に笑いながら用意されていたお茶を淹れる春歌に、セシルは迷いのない笑顔で頷いた。 「あ、でも大浴場もあるみたいですね。夕ご飯まで一時間くらいありますし、まずはそちらに入ってもいいですか?」 「もちろんです。貸切で他人がいないのならワタシも入ってみたいです」 「素敵です! そっちはどうだったのか後で教えてくださいね」  用意されていた地元の銘菓らしい最中を摘まみながら、話すだけでも心が躍った。  二人の高揚は備え付けの浴衣を見つけた時に更に跳ね上がることになる。それぞれの浴衣を抱えた二人は静まりかえった廊下を通り、男湯と女湯に分かれている入り口で小さく手を振り合って別れた。やはり高級宿らしく脱衣所や風呂自体もモダンで広々としていたが、一人でそれぞれ湯船に浸かっている間、セシルも、そして春歌も眼前の光景に現実味を感じることが出来ずにいた。昨日までの日々とかけ離れた非日常、突如としてそこに向かわされた理由への疑問が一人でいると頭を離れなかった。恐らく同じ思いを抱えているであろう壁の先にいる相手が気がかりで仕方がない。  結局、自身に追い立てられるようにして、二人はほぼ同じタイミングで湯から出た。  セシルは脱衣所の壁に貼られていた浴衣の着方を流し見しながら、浴衣を身に着ける。何度か仕事で着たこともあり、一人でもさほど苦労はしなかった。墨にある自販機で少し悩んで珈琲牛乳を二本買い、セシルは待ち合わせ場所であるロビーへと足を向けた。温泉あがりに牛乳を飲むことこそ至高だと、同期の誰かが言っていたのをセシルはぼんやりと思い返していた。 「あ、セシルさん」 「ハルカ! その浴衣とても似合っていますね。とても奥ゆかしいです」 「ありがとうございます。セシルさんもとってもかっこいいです……!」  再び出会った恋人達は先程までに葛藤を一旦置き、相手の姿に暫し見惚れた。 「髪もまとめているのですね。カンザシなんて時代劇以外で初めて見ました。とても可愛い」 「これですか? この前トモちゃんと会った時に貰ったんです。最近流行っているんですって」 「この場所によく合っています。アナタは何をしても美しいけれど、今日は一際美しい」 「美しいだなんて、そんな……」  春歌は髪を一つに纏めて、小さな簪で留めていた。大仰な飾りもないシンプルなものだったが、それが派手ではない浴衣に丁度良かった。  春歌は一方的に褒められて、少し困ったようにはにかんだ。 「セシルさんこそ、よくお似合いです。綺麗に着られてますね」 「そうですか? ありがとうございます」  頬を染めた春歌に褒められて、セシルはやや安堵したような様子を見せた。セシルにそこまで自覚は無かったが、異文化の衣装に身を包むことで彼の持つ神秘性が誇張されている。春歌はそれを何度か言語化しようと口を開き掛けたが、それを言う前にセシルが何かしら彼女を褒め称えるので、その合間に思いを伝えるのは至難の業だった。 「そういえば、待たせてしまってすみません。これはお詫びです」  セシルが珈琲牛乳を差し出すと、春歌は二、三度目を瞬かせた。 「……実はわたしも」  そう言いながら春歌が差し出したのは二本のフルーツ牛乳だった。セシルは声を出して笑うと、それぞれの牛乳を一本ずつ交換した。 「すみません。まさかセシルさんまで買うなんて思っていなくて」 「いいえ。寧ろ良かった。どちらにしようか迷っていたのです。これで両方飲めますね」  セシルはフルーツ牛乳にストローを差し込み、春歌は一瞬迷って珈琲牛乳を開けた。  よく冷えた牛乳はそれぞれの火照った躰によく沁みた。余った一本を片手に持ち、開いた片手で手を繋いで、二人は寄り添ったまま部屋まで戻った。  余った牛乳を部屋の冷蔵庫に入れるのと、夕食が運ばれてくるのはほぼ同時だった。山奥の町にあることもあり、山菜と肉が中心の和食が並んでいく。 「Amazing! とても美味しそうですね!」  目を輝かせながらセシルは席についた。見渡しても何処にも魚がないことに春歌は密かに胸を撫で下ろしていた。折角の休日なのだから、セシルが好きなものを食べて欲しいと彼女が願うのは当然のことだった。 「これは特に気に入りそうです。この牛肉の艶……」  そう言いながらセシルが箸で肉を持ち上げ、その後何かに気がついたように目を瞬かせた。 「ふふ、ここにカメラはないですよ」 「ショクギョウビョウですね……」 「セシルさん最近食レポのお仕事増えましたから」 「美味しい以外の語彙を増やせとこの前カミュに怒られました」 「お優しいんですね」  そんなことを語り合いながら箸を進めていく内に、テーブル一杯に並べられていた皿はすぐに空になった。料理はどれも二人の口に合っていた。    食器が下げられた後も二人はそのまま向かい合って座ったまま、思いついたことをあれこれと話し続けていた。明日行ってみたい場所、アグナパレスの動向、同期の仲間達の活躍――話題は次々と変わったが、次第に二人が関わってきた仕事の話に落ち着いた。 「考えると、随分長く日本にいる気がします」  セシルは茶を一口含むと、深く息を吐きながらそう呟いた。春歌は黙ったまま深く頷く。二人の脳裏には過ごしてきた日々と紡いできた音楽が満ちていた。それは運命の悪戯がなければあり得なかった日々、生まれなかったものなのだ。 「セシルさん、折角ですから曲を聴きませんか? ……イヤホンは一つしかないですけど」  セシルもイヤホンを持っていることは彼女も承知の上だろう。春歌が僅かに視線を逸らしながら口にした意図を、彼はすぐに理解した。 「そちらに行ってもいいですか?」 「…………はい」  セシルは春歌の隣に座り直すと、彼女が差し出した片耳のイヤホンを自身の耳に差し込んだ。  隣り合う手をしっかりと繋ぐと、二人の音楽が再生された。当時の自分達が発した想いと願いが溢れ出す。一曲一曲が二人にとってはどんな写真よりも鮮明だった。普通よりずっと短い学生生活、海を超えたアグナパレスの街並み、辛いことも学びも数えきれなかったデビューまでの道のり――次第に早まっていく互いの鼓動を感じながら、二人は遠くなった日々を眺めていた。アルバムを聴き終わると辺りは再び穏やかな沈黙に包まれた。余韻だけが辺りに響く。 「……こうしてワタシ達は今ここにいるのですね」 「そうですね。やっぱり、全部音楽に詰まっていました」 「こんな時間は久しぶり。大切なことを忘れていたのかもしれません」  そう言うとセシルは春歌を強く抱き締めた。 「…………ずっとこうしたかった」 「わたしも……」  互いの存在を確かめ合うように、二人は腕を相手の背に回していた。 「アナタの為、アナタへの想い、それが全ての始まりだった筈なのに。ワタシはそれに蓋をしていた」 「それが全部悪いことだとは思いません。だってもうわたし達はあの頃のままじゃないんですから。大切なものも沢山増えました」 「分かっています。それでも」 「はい。結局、わたしもずっと寂しかったんでしょうね。……抱きしめ合うなんて簡単なことだったのに、もっと頑張らなきゃって思い詰め過ぎてたのかも」  春歌の言葉一つ一つを噛み締めるようにセシルは頷き、春歌の柔らかな髪を撫で続けていた。 「何故でしょう。今日、またハルカと出会い直せたような、そんな気がします」 「わたしも同じ気持ちです」 「嬉しい。ワタシ達は本質的に似ているのでしょうね。……この想いを忘れたくない」 「新しい曲を作りましょう。何があっても、またこうして思い出せるように」  今の想いも、情景も、曲に編み込めば蘇る。まるで目の前へと再び現れたかのように鮮明に。それがどれほど大切な道標になるのか、二人は誰よりも理解していた。  そのまま二人は互いの鼓動を感じて寄り添い合っていた。時間が流れるにつれて、春歌は目蓋を重たげに瞬かせる。 「もう今日は遅い。眠ってもいいのですよ」  セシルの囁きに春歌は小さく首を振って答えた。 「もう少し……もう少しだけ側にいさせてください」  半ばセシルにしがみ付くようにして発される言葉には、祈りにも似た必死さが込められていた。宥めるようにその頭を撫でながら、セシルは視線を滑らせる。 「では眠気覚ましに、また温泉に入りましょうか」 「あれ、でも大浴場の時間は終わって……」 「部屋の温泉なら時間の制限はないみたいですよ」  そう言いながらセシルは備え付けの温泉への扉を見据えていた。春歌は目を擦りながら、名残惜しげにセシルの腕を振りほどいていく。 「それなら少し入ってきます。待っていてくださいね」 「ハルカ」 「なんですか?」 「一緒に入りませんか」  風呂に入るまでもなく、春歌は一瞬で目が覚めた。それに気付いていないセシルは部屋に置かれていた説明書きを差し出した。そこには〝混浴も出来る貸切温泉〟という文字が躍っている。俯いたままの春歌の耳が赤く染まっていく。遠くで鹿威しが鳴り響いていた。 「ハルカ、大丈夫ですか?」  セシルがそっと顔を覗き込んだ時、今にも消え入りそうな声で、はい、と囁く声が聞こえた。  二人は強く手を握り、小さな脱衣スペースに足を進めた。帯を解きながら、春歌は密かにセシルの方へと視線を向けた。もう数え切れない程こうして向き合う機会を作ってきたが、彼女は未だに新鮮な羞恥と僅かな期待を抱いてしまっていた。視線を床に戻し躰を小さく縮めるようにしながら、春歌はタオルを巻いた。 「本当に久しぶりですね、こういうの……。事前に分かってたらダイエットしたのに」 「その気持ちはとても嬉しいです。でもハルカは今のままでも美しい。心配いりませんよ」  セシルは春歌の手を引き、露天風呂まで導いた。少し濁りのある柔らかな湯は熱すぎることもなく、そっと二人を包み込む。それに心地よさを感じながらも、春歌は頬を染めたままセシルの方を向けずにいた。タオルも湯船に浸かる前に置いているので、二人の間を隔てるものは本当に何一つない。  彼女もそれは嬉しいと思っているが、どうしても恥ずかしさが勝ってしまう。春歌は自身のいつまでも初心な側面をあまり好んではいなかった。 「きゃっ!?」  その時、首筋に柔らかな感触があった。慌てて春歌が振り向くと、セシルは声を潜めて笑っていた。 「驚かせてごめんなさい。我慢が出来ませんでした」  白い項に残された痕をセシルはそっと指先で撫でる。その感触だけでも春歌は僅かに肩を震わせた。春歌の過敏さは今に始まったことではないが、最近ますます感覚が鋭くなっているようだった。 「……唇にもしていいですか?」  セシルに耳元で囁かれるだけでも、春歌は視界が揺れるのを感じた。鼓動が止まなくて、想いが溢れそうで、彼女は頷く前に自ら恋人へ口付けた。セシルは驚きで一瞬目を開いたが、すぐに深い口付けを返す。そのまま二人は強く抱き合った。 「目は覚めましたか? My Princess」 「はい……。そして、あの……」 「どうしたのですか?」  セシルが背を撫でながら聞くと、春歌はその度に強くしがみつく。そうしながらも、彼女は最大限勇気を振り絞って口を開いた。 「折角の温泉ですから、お背中流させてください」  もうお風呂入っちゃったので形だけですけれど、と春歌は続けて呟いた。最早眠気など完全に消えていた。今はただもう少し深く恋人と触れ合いたいという想いがあるばかりだった。  温泉での恋人らしいことで咄嗟に出てきた提案だったが、春歌は口に出してからその提案の大胆さに気付いた。恐る恐るセシルの表情を伺うと、彼は喜びを歌うような瞳で春歌を見つめていた。 「是非お願いします。実は少し憧れていたのです」  湯船から出た春歌はタオルを持ち、ボディーソープを泡立てた。セシルは既に椅子に座っている。目の前の広い背へと、春歌はそっと触れていく。 「どうですか?」 「少し擽ったいですけど、気持ちがいいです」 「よかった」 「ワタシばかり洗ってもらうのは勿体ない。アナタの背中も流させてください」 「えっ、わたしもですか? 普通男性が女性にしてもらうものじゃ……」 「そうかもしれませんね。ワタシがしたいだけ」  さぁ、と促されて春歌はセシルが座っていた椅子に腰掛けた。目の前の鏡には今にもセシルに触れられようとしている素裸の自身が映っている。鏡越しにセシルを目が合い、春歌は慌てて俯いた。泡立てたタオルで上から下へと背を撫でられると、それだけでゾクゾクするような感覚が全身に走る。思わず春歌は手にあったタオルを握り締めた。セシルはそれを分かっているのか、優しく何度も名前を呼ぶ。その度に春歌は俯いたままで頷いた。 「気持ちよかったようですね。折角ですから全身も……」 「セシルさんそれは大丈夫です!」 「ふふ、そうですか。では湯船に戻りましょう」  互いの泡を流して湯に浸かった。セシルは春歌を背後から抱きしめる。躰がすっぽりと覆われてしまうこの体勢が春歌は好きだった。 「前にもこうしてお風呂に浸かりましたね」 「ええ、祖国のようにバラの花を浮かべて。アナタが少しでも元気になれるようにと」 「懐かしい……。あの時も、今も、わたしドキドキしてばかりです」 「ワタシも実はそうなのですよ」  春歌は背から感じる鼓動を実感しながら頷いた。セシルは目の前の項に再び口付ける。それを合図にするように春歌は振り返り、二人はもう一度深い口付けを交わした。 「……そろそろ部屋に戻りましょうか」 「はい……」  互いの躰を拭いて、形だけ浴衣を羽織って部屋に戻ると、既に布団が敷いてあった。逸る気持ちを抑えながら、セシルは春歌をゆっくりと布団に横たえる。春歌は緩く結んでいた帯を自ら解いた。 「あの、明かりを消してください」  セシルが部屋の明かりを消すと、隅に置かれた常夜灯がぼんやりと周囲を照らした。春歌は手で顔を覆い、指の隙間からセシルを見つめている。潤んだ瞳には羞恥と愛情、そして期待が滲んでいる。既に露わになった膚は温まって上気していた。我慢など出来る筈もない。 「愛しています。……ハルカ」  薄い闇の中でセシルの瞳が何よりも明るく光る。それが近づき、二人は口付けを交わした。  いつもと同じではない、愛を確かめ合う時の何より深い口付けに、それだけで春歌は目眩がした。名前を呼ぶ低い声、抱き寄せる腕の力、触れてくる手の優しさ、全てが胸の内に弾けるような幸福感をもたらす。背中を流した時にも感じた固い躰の感触が春歌の全身を満たしていった。セシルもこの瞬間を何より愛していた。愛する存在だけで心を満たし、一つに繋がろうとするこの時に伴う幸福は何物にも代えがたい。もっと深く、もっと強く腕に抱きたいと、湯船で触れ合っている間中彼は願い続けていた。それを拒むものは今何も無い。何度も口付けを交わしながら、セシルは春歌の柔らかな胸元に手を滑らせた。 「ん……あっ、ああっ!」  柔らかく触れ合い続けた躰はもう限界だった。春歌はセシルの腕に強く縋る。セシルは彼女を宥めるように何度も口づけを落としていった。唇だけではなく、額や指先、首筋、胸と至る所へとそれは祝福のように降り注ぐ。そんな僅かな動きですら、過敏な膚は蕩けるような快感を得ていた。勿論、それを一人だけで甘受するのは春歌の望むことではない。耳を食まれながらも、春歌はセシルの下腹部へと手を伸ばそうと必死だった。腕の中にいる彼女の意図を理解したセシルは息だけで笑うと、大丈夫と囁く。耳元で発される声は、興奮と喜びが隠せていない。いつもより少し低いその声で囁かれて、その度に息を呑みながら春歌は小さく首を振った。 「でも……っ、わたしだけじゃ……ぁ……」  目を潤ませて此方を見上げる姿を見てセシルは深く息を吐いた。そんな顔をされて素直に主導権を譲る人間などいる筈がない。未だに弱々しく伸ばされる腕を優しく制しながら、胸、腹とセシルは指を滑らせる。辿り着いた場所は軽く触れるだけで小さな水音を立てた。 「ああっ……!」  掴んだ布団に深く皺がよる。肩に掛かっているだけの浴衣ごとセシルは彼女を抱き締めた。それに支えられるようにして、春歌も布団から指を離してセシルの腕を強く掴んだ。その手は僅かに震えていた。 「それだけ良かったのですね」 「はい……っ……久しぶりで…………こんな……」 「大丈夫。そのままワタシだけでアナタの全てを満たしてほしい」  溢れている粘液を指に絡ませると、セシルは春歌の内部へそっと指を挿入した。数年に渡って開発されたそこは、挿入だけでも痺れるような快感をもたらした。 「はっ……あ、あっ、う……ああぁ!」  長い指が撫でるように内部で動く度に、春歌は深く息を吐いた。目もくらむような感覚に翻弄されながら、春歌もそっとセシルの躰へと手を伸ばす。浴衣の隙間から久しぶりに触れた箇所は信じられないほど熱かった。以前教わった記憶を辿りながら手を動かすと、セシルは小さく唸った。 「ハルカ、アナタと……」 「お願いします、わたしも……早く……!」  セシルは傍らに置いてあった避妊具を開け、逸る気持ちを抑えながら装着した。片手をしっかりと繋いだまま、二人はゆっくりと繋がっていく。挿入が深くなる度に、二人は手を強く握り合った。最奥まで辿り着くと、セシルは低く声を洩らした。 「……動きますね」 「は、い……」  春歌が頷いたのを確認してから、セシルは動き始めた。  その度に春歌は視界が白むのを感じた。心も躰も全てが目の前の恋人で満たされる。何も考えられなくなるその一瞬、一瞬を春歌は深く愛していた。だがそれでも、もっと相手を求める気持ちが溢れて止まらない。  セシルが自分を気遣っていつもより抑えた動きをしていることを春歌は今にも飛びそうな意識の中で理解していた。白い腕がセシルの首へ回る。 「セシルさん、もう大丈夫ですから……」  もっと、と無言で訴える瞳に、セシルは息を呑む。返答の代わりに汗ばんだ額へと口付けをすると、セシルは少しずつ腰を大きく動かしていく。より深く、強く、相手と一つになりたいという想いが溢れて止まらなかった。 「好きですっ……すき…………!」 「ワタシも……愛しています」 「……ええ、誰よりも」  互いの名前と愛の言葉を何度も、何度も耳元で囁き、その度に痺れるような喜びが走った。  数え切れないほど口付けを交わし、変わらぬ愛を誓い合う。互いの繋がりを確かめ合う時間がそこにあった。その喜びが頂点に達した後も、髪を撫でて体温を分かち合いながら二人は深い眠りに落ちていった。セシルも春歌もその時見た夢は覚えていない。あの時間以上に幸福な夢など存在しないのだから、当然のことだった。  目覚ましのベルが鳴らない朝はいつ以来なのかと、セシルはぼんやりと考えた。腕の中には柔らかい温もりがある。視線を落とすと、愛おしい恋人がまだ穏やかな寝息をたてていた。その眠りを妨げなくなくて、セシルは暫く春歌の寝顔を眺めていたが、数分もしないうちに彼女は目を開けてしまった。 「セシルさん……」 「おはようございます。ハルカ」 「なんだか不思議です。目覚ましも鳴らないし、朝起きたら一番にセシルさんの顔が見られるなんて」 「ふふ、ワタシも同じことを考えていましたよ」  眠い目を擦りながら照れたように笑う彼女をセシルは優しく撫でていた。  身支度を整えると同時に、朝食に呼ばれたので昨日は使わなかった食堂に向かった。夕食に比べて簡素な献立だったがやはりどれも味は良かった。だが、二人は朝食もそこそこにすぐに部屋へと戻ると、チェックアウトの時間までひたすら打ち合わせを繰り返した。楽譜は春歌が持っていたので滞りはない。町の観光も、お土産も、興味が無い訳ではなかったが、セシルも春歌もやりたいことはただ一つだった。  仕事をしなければという無意識の焦りからではなく、ただ沸き上がる音楽への衝動のままに語り合う二人には心地よい充足感が満ちていた。  ある程度大枠が出来た辺りで女将から声を掛けられ、二人は導かれるままに旅館を出た。外は雲一つ無いほど美しく晴れていた。頭上に差す日差しが初夏の訪れを告げていた。 「社長がわたし達を送り出した理由がやっと分かりました。わたし達以上に必要なものが分かっていたんですね」 「そうですね。サオトメにはまだ敵いません」  行きは少し長く感じた駅までの道のりも、帰りは瞬く間だった。その間、二人は言葉少なに、またいつかと囁き合った。そのいつかは、長い道が二人の後ろに出来るようなずっと先だろうとセシルは思った。  改札をくぐって列車に乗ると、すぐに発車ベルが鳴り響く。遠くに古い街並みが見えた。セシルと春歌はそれを一瞬だけ眺めた後、敢えて振り返ることはなかった。

再録集「真夏の花園」に書き下ろした話です。温泉旅行でセックスさせたいという強い意志で書きました。

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