ピースサイン
「はっ……はぁっ……あ…………?」
「やった! 遂にやったぞ!」
セシルの薄い唇からは透明な唾液が垂れる。それはむき出しにされた褐色の膚を伝って、溢れ出る先走りと混じり合った。
男はパサついた髪からフケを飛ばしながら、両手を強く握りしめた。
その日の撮影はとても順調に進んだ。シャイニングとレイジング、それぞれの事務所の節目として合同で出されるビジュアル撮影。それに向けて双方の事務所は抱えているグループをスタジオまで送り出した。
ST☆RISH、QuartetNight、HE☆VENS――今一番勢いのある三グループは特別な衣装に身を包み、見事に期待に応えていた。カメラマンは舌を巻き、スタッフの中には涙ぐむ者もいた。撮影が終了した後も、雑誌のインタビュアーが次々に訪れ、辺りには互いの健闘を称える声が響いていた。
スタジオのドアが開いたのはその時だ。光り輝く空間の中でその男はあまりに異質だった。低い背、醜く太った体、吹き出物だらけの顔の持ち主である男は、歪んだ歯の間から荒い息を零している。甲高い声で何かブツブツと呟きながら、男はスタジオの中央へと移動していった。その時にはスタッフやアイドル達も男の存在に気づいた。
「すみません。アナタはスタッフですか?」
ちょうど隣を通りかかった男に、セシルは声をかけた。あからさまに不審な男はセシルの声には答えず、まるで品定めでもするように上下に視線を動かした。
「あの――」
更に口を開こうとしたセシルの前に、漸く辿り着いたスタッフが守るように立つ。男は次々と質問をされたり腕を引かれたりしており、スタジオに勝手に立ち入った部外者として処理されようとしていた。
「やっぱり、みんな格好いいなぁ。生で見ると違うわ。才能があって、顔が良くて、イージーモードの人生歩いてさぁ……」
そう呟きながら男はポケットから小型の機械を取り出した。
「でも神様っているんだよ、生きてると生きてると良いことあるんだな~」
そのスイッチを押した瞬間、スタジオ内は水を打ったように静まり、その後再び活気を取り戻した。一つ違うのは男の周りにいたスタッフ達が何事もなかったかのように散っていったことだ。
「だ、れ、に、し、よ、お、か、な?」
そう呟きながら、男は我が物顔でスタジオ内を歩き回る。だが、それを咎める者は誰もいなかった。
「顔だけだったら翔君も好きだし、藍ちゃんだって充分抜けるし、瑛二君とかも可愛いけどさぁ……」
男は目の前にいる人物の袖を掴むと、強引に床へと引き倒した。
「……っう」
「やっぱりセシルちゃんだよな! 何ださっきの態度? 僕のことを臭くてキモいオヤジだと思ってんの顔にモロ出しだったのも可愛いね♡ あまり人のこと舐めてんじゃねえぞ馬鹿野郎」
唾を飛ばしながら捲し立てる男をセシルは焦点の合わない目で見つめていた。彼が本来持つ意思は無意識の中へと沈み込んでいるらしかった。脱力した肢体は床へと座り込んだまま、無防備に男の足へしなだれかかっている。その重みは目の前の非日常めいた情景が現実であると男に伝えていた。
「立て」
男の命令に応えてセシルの躰はふらつきながらも立ち上がる。隣に並ばれると背の低い男はセシルを見上げる形になってしまい、小さく舌打ちした。
「そうだ……! そのまま下だけ脱いで屈んでみようか。上には手を付けないでね」
セシルの手は本人以外の意思で動いていく。ブーツと靴下を脱ぎ、衣装のベルトを外し、下着ごとスラックスを一気に引き下ろした。露わになった部位を見て、思わず男は口笛を吹く。セシルは命令通りに上着には手をかけず、そのまま屈み込んだ。
「あっ、何で脚閉じてんだお前。下半身丸出しにしといて今更カマトトぶってもダメだよ。空いた両手はピースしてよっか。さっきの撮影でピースしてたの可愛かったもんなぁ!」
「……はい」
虚空に視線を彷徨わせたまま命令に従うセシルは完全に正気を失っていた。間の抜けた下品なポーズをさせることで、セシルが生来持つ気品を穢しているようで男は満足げに目を細めた。セシルの腿を脂肪で膨らんだ手が這い回り、閉じられていたそこを強引に押し開いていく。
「うっわ柔らか過ぎるだろ……指が無限に埋まるわ。セシル君って着痩せするタイプなんだね。こんなムチムチの太ももは男でも課税対象、王族がそんな初歩的な経済も分かんないなんてアグナパレスの落日は近いな」
男は一方的に捲し立てるのを止めずに、露わになった陰茎を携帯で連写した。男の狙い通り、未だ手付かずでアイドル然とした上半身と無防備に晒されている下半身のギャップは非常に淫猥で劣情を誘う。
「せっかく写真撮ってんだから勃たせてみろよ。ファンサービスの精神に欠けるぞ。でも萎えてる状態でもご立派様なのは評価出来るね! 今後に期待だ」
男が指で突く度に垂れ下がった陰茎は無様に揺れた。スタジオ内はまだ熱気に溢れていて、歩んできた歳月を振り返る者や今後の意気込みを語る者、撮影した写真をチェックする者が盛んに行き交う。その中でセシルは醜い男の足下で屈服させられている。
「こんなキラキラで格好つけた衣装なんか着てるから自分が偉いって勘違いしちゃうんだぞ? アイドルなんて所詮他人に媚び売って金巻き上げる肉便器だろうが。もっと相応しい衣装にしてやるよ」
裸に剥くんじゃただの人間犯してんのと同じだから、そう呟きながら男は傍らにあった調整用の裁縫道具から鋏を取り出した。そのままセシルのシャツとベストを切り落としていく。首から鎖骨までの布だけを残して改造された衣装は、躰を覆う機能など微塵も残っていなかった。無事と言えるものは最早ジャケットとネクタイしかなく、それらはもちろん肉体をより卑猥に見せる為でしかない。刃先が当てる度、まるで反発するように押し返す筋肉の弾力を男は楽しみ、露わになっていく褐色の膚に生唾を呑んだ。
「なっ……これは……!?」
「えっ……アレ……? ……セシルちゃ……え…………?」
行為に没入していた男は急に現実へ引き戻される。目の前にある玉虫色の瞳ははっきりとした意志を持って男を睨んでいた。
「アナタはさっきの! これは一体どういうことですか!? ワタシも……皆も……!」
異常の原因は男だと既にセシルは理解しているらしい。男が鋏を取り落とした音が響いた。それにつられて視線を落としたセシルの頬が瞬時に赤らむ。今、自分がどのような格好をしているのか漸く自覚したらしかった。
その様子を見た男は吹き出し、悠々と鋏を拾い上げた。セシルは正気こそ戻っているが、逆に言えば彼が取り戻しているのは意識の主導権だけだ。事実、セシルは何も抵抗できていない。男が指示した通りにピースサインを取り、脚を開いて醜態を晒し続けている。男は相手を物言わぬ人形に落とし込むことを好んでいたが、素材そのものの味を楽しむことも嫌いではなかった。
「このヤロウ耐性でもあんのか? ビビらせやがって……そんな痴女そのものの状態で鳴かれても誘ってるようにしか見えないよ? まともそうな顔してまだ頭に催眠残ってんのか?」
男がセシルの頭を叩くと、セシルは小さく呻いた。そのまま男は手を滑らせ、セシルの露わになった胸元の肉を揉んでいく。太い指が端正な線を歪める度に残された布地からタトゥーが見え隠れし、小生意気な弾力と共に男の劣情を煽った。
「セシル君って褐色膚の割に乳首は可愛い色してて好きだな~おっ、ちょっと勃ってきた」
「……っ、アナタが何をしたのか知りませんが今すぐ止めた方がいい。そんなことも分からない?」
「へ~高貴高貴、可愛いね? 誇り高さと無謀な馬鹿って紙一重だな。というかそろそろ飽きたわ、そういうの」
男は吐き捨てるように呟くと、小型の機械を再び取り出し、セシルの眼前へと突きつけた。
「やっぱり僕ってセシルちゃんみたいな下に見てくる奴嫌いなんだよなぁ! ムカつくから性癖から滅茶苦茶にしてやろう。感度も数倍にして……僕に見られてる間は死ぬほど発情するようにしてあげるね♡♡ 今後はそれを一生誇れよ」
「そんなふざけっ――!?」
セシルの顔から血の気が引いた時には既に遅かった。男がスイッチを入れた瞬間、セシルの意識は再び沈み込んでいく。
「はっ……はぁっ……あ…………?」
「やった! 遂にやったぞ!」
薄い唇からは透明な唾液が垂れている。それは剥き出しにされた褐色の膚を伝って、溢れ出る先走りと混じり合った。力なく垂れ下がっていたセシルの陰茎は機械の効果もあり、既に射精寸前なほどに勃ちあがっている。
男はパサついた髪からフケを飛ばしながら、両手を強く握りしめた。
「もう何が起きてるかわかってなさそう! おじさんがとっておきの秘密の機械を使ったからだネ♡ 科学は全てに勝つんだよ。男らしくて格好いい体格にバキバキに勃起したチンポとハレンチダブルピースの馬鹿さのミスマッチが最高だよ~~~♡♡♡ あぁ絶景かな♡」
男は我が物顔でセシルの頬に口づけると、両腕でその躰を強く抱き締めた。
「セシルちゃん全身むちむちで可愛いね♡♡ 男の子らしいかっこいい体格してるのにお肌はスベスベなのスケベ過ぎんだよな。一生懸命鍛えて整えたカラダは、汚いおじさんの欲情加速装置にしかならないんだよ♡ ああ……もう我慢出来ないよ」
そう言うと男は立ち上がり、下半身を露出させる。屈ませている為、セシルの鼻先に蒸れた男の陰茎が突きつけられた。だがそれに拒否反応をする自由すらセシルには与えられていないのだ。
「ほら、そのまま僕を口に咥えて舐めてね! セシルちゃんのぷるぷるの唇がツンツン当たってるだけでっもう……早くしろつってんだろ! 甘えが許される業界じゃねえだろうが!」
意識も無いまま荒い息を吐き続けるセシルの髪を掴むと、男は自身の長大な陰茎を半開きの口へと押し込んだ。
「うごっお゛!?」
「あぁ~♡♡♡ あったけえ……セシルちゃんのお口マンコ最高だよ……柔らかいのに奥突くと締まって気持ちいいねぇ! これぞまさにアルカディアだよ♡♡ う゛っ出る……!」
男はセシルの喉奥に亀頭を押しつけたまま、溜め込んだ精液をぶちまけた。改造された感度はその強い衝撃でさえ快楽を得て、セシルの陰茎からも白濁が飛び散った。
「うわっ、ドM開発成功してんじゃん。救いようがなくなった記念撮影しよっか♡」
男はスタッフからカメラを奪い取り、撮影データにセシルの卑猥な様子を上書きしていく。唇の間から白濁液を零し、焦点の合わない目でセシルは男を見つめている。シャッター音が響く度に、掛けられた暗示が強く作用し、セシルは再び荒い息を零して陰茎を勃ちあがらせている。
「よく撮れてるなぁ! 記念ビジュアルこっちに差し替えたら? ふふ……まだまだ遊び相手はいるし、もっとも~っと一緒に楽しもうね? セシルちゃん!」
「はひっ……♡♡♡」
明らかに男に屈服し、支配されているセシルの様子はこれ以上無いほど無様で卑猥そのものだった。
友達が描いてくれた10周年ビジュ衣装のダブルピース愛島君のエロ絵に感動して三次創作の許可を得て書いた物です。
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