カーテンコール・スクラップ
ある少女の証言
Q 今のお気持ちを正直にお願いします。
A セシルさんはあんなことをする人ではありません。
Q そうですか。でも、あの光景を貴女は見ていましたよね?
A はい。それでもわたしはそう思っています。……おかしいことは自分でも分かっているけれど、わたしにはどうしてもあれがセシルさんの本心だとは思えないんです。
Q 最近の愛島さんに何か変化を感じたことはありましたか?
A 沢山ありました。今考えたら不思議だな、おかしいなって思ったことばかり浮かんでくるんです。でも、何故かあの時のわたしはそれに気づいてあげられませんでした。それが当たり前のように思い込んでいたんです。…………きっとセシルさんは、そしてわたしも、何かとても卑怯な力に負けてしまったんだと思います。
Q あの、そんな魔法みたいな力があるとでもお考えですか?
A ……そうですね、魔法なんてこの日本にはないです。
Q 今のセシルさんにかけたい言葉はありますか?
A わたしはセシルさんのことを信じていました。いいえ。今も信じています。今はただもう一度会いたい、それだけがわたしの願いです。どんなことをしても、必ず会いに行きます。……どうして……何故……わた、し、は……。
少女は溢れる涙を拭い、荒れ果てたステージに目を向けていた。誰もいなくなった舞台には少女の啜り泣きだけが響く。築き上げられた夢の跡は今となっては無残な骸に過ぎなかった。
記者の男はボイスレコーダーの電源を切ると上辺だけの励ましを投げかけ、背を向けた。もう彼を惹き付けるものは此処には無い。そのまま彼は決して振り返らなかった。
残された少女は楽譜だけを強く抱えると、何処かへと歩き出した。頬を伝う涙を乱雑に拭う。
今の彼女の心を満たしているのは唯一人に捧げる為の旋律だった。
本格催眠ものモブセシ本再録です。少し構成を凝ったところが気に入っています。
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